「遺言書」は人生の中で、そう何度も書く機会はないのが普通です。
ですが、ドラマなどで見るおかげで、誤ったイメージを持っている方も一定数いるようです。

遺言書にはいくつか種類があるのですが、ここでは当事務所でオススメしている「公正証書遺言」を中心に、実はあまりよく知られていない「遺言書」について詳しく紹介します。

①自筆証書遺言とは?

その名の通り、自分の手で自筆する遺言書です。
便箋に自筆で書くだけですので、最も簡易的に作ることができる遺言です。

遺言書を書く

ということのイメージに一番近いものが、
この「自筆証書遺言」ではないでしょうか?

自筆証書遺言のここが危ない!!

自筆証書遺言は、簡単に作れる・・・
確かに手書きで作成するので、「作ること」そのものは手軽です。

しかし、問題はその内容です。

「民法」という法律に、遺言についての細かい「取り決め」があり、一つでも不備があると「無効」という事態になりかねない、実はとても危険ない遺言方式です。

専門家から見るとほとんどの自筆証書遺言は無効といっても良いくらいです。

さらに、自筆証書遺言が発見された場合は、必ず裁判所で検認を受ける必要があります。この「検認の手続き」が非常に煩わしく、期間も1か月ほど要するため、自宅で保管するのではなく、法務局の「遺言書保管制度」の利用をおすすめします。

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こんな遺言は無効です

本文が自筆されていない

財産の一覧にした「財産目録」はPCでプリントしたものでも構いませんが、「本文」は自筆でなければなりません。
つまり、本人が自筆することができない場合は、作成することができません。

訂正してある

訂正の方法も、民法で細かく定められています。
書き間違ったからといって、「二重線に訂正印」では無効になってしまいます。
修正液などは論外です。

内容に問題がある

財産の所在を示して、ハッキリと特定できるように書く必要があります。
「土地・家屋は妻に託す」
「〇〇銀行の預金は長男に渡す」
「車は世話になった友人に譲る」
このように書いただけでは、不明瞭、不正確な内容として無効となります。

財産はキチンと特定できるように書かなくてはなりません。

日付や署名がない

日付・署名がない場合も、たまにあるようです。
「〇月吉日」というような書き方も、もちろん認められません。

まとめ

②公正証書遺言

当事務所でもオススメする、2つめの遺言方式が、「公正証書遺言」です。
「私文書」である自筆証書とは違い、公証役場の公証人と打ち合わせの上、「公文書」に仕立てるのが特徴です。
これ自体「公的な文書」ですので、裁判所での検認も不要です。

公的に保証された内容であり、遺言の内容を実行する「遺言執行人」を誰にするのかを記載しておくのが通常です。
そのため、書かれた遺言の内容は必ず実行されます。

なぜ公正証書なのか?

公正証書遺言を作る人の気持ち

遺言を作ろうと思い立った時に、公正証書遺言を選択する理由は、何といっても

遺言内容の有効性

です。
無効になってしまったり、実行されなかったりすると、意味がありません。

公正証書遺言は公証役場で、公証人という役人が作る「公文書」です。
そのため、遺言内容や書き方の不備によって、遺言書自体が無効になることは通常あり得ません。

公正証書は作成の時に、公証人がその遺言内容は本当に遺言者の真意であるかどうかを確認します。
これは、相続人や第三者が関与して遺言者の意思とは違う内容の遺言が作られることを防ぐためです。
ですから「公正証書遺言が存在する」ということ自体が、遺言者の意思が正確に反映された証となるのです。

ドラマで見る、自筆証書遺言の内容が本当に真意なのかを疑った相続人が争いを起こす、ということが本当にあるのですが、公正証書遺言ではその点は争点になりにくい傾向にあります。このように自筆に比べて公正証書は、圧倒的に「強い」のです。

さらに、原本は公証役場で厳重に保管されるため、紛失・破棄・改ざんなどの危険もありません。

証人とは?

公正証書を作るにあたって、2名の証人を立てなければなりません。

証人になれない者の条件が民法に定められていますので注意が必要です。
① 未成年者
② 推定相続人、及び受遺者、並びにこれらの配偶者及び直系血族
③ 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

②がクセモノではないでしょうか?

近しい親族はほとんどアウトだと言えそうですが、だからといって全く利害関係のない第三者を「証人」として、2名も出頭させることは何となく気も使いますし、心理的に難しいのでないでしょうか?

通常は作成を依頼した専門家(行政書士・弁護士など)が、そのまま証人になることがほとんどでしょう。また、法律専門職の士業が証人になっていることで、キチンと専門家に依頼して作成されたということが分かりますので、相続人同士の紛争を未然に防ぐ効果もあります。

費用がかかる

公正証書遺言を作成するには、費用がかかります。

記載する財産の価額によって公証役場に収める手数料が異なります。

遺言に記載する財産の価額手数料
100万円まで5000円
200万円まで7000円
500万円まで11000円
1000万円まで17000円
3000万円まで23000円
5000万円まで29000円
1億円まで43000円

なお、1億円以下のときは、手数料に¥11000がプラスされます。

ほとんどの場合は3~8万円の間に収まっている印象です。

財産を公表することになる

公正証書遺言の作成にあたって、財産調査を行い、それらの資料も公証人に提出します。
したがって、公証人や証人2名に財産を公表することになります。
誰にも知られたくない財産があるときは遺言に記載することはできません。ですが、世間一般に知られるものではありませんし、この点をデメリットと感じられる方を今まで見たことはありません。

まとめ

  • 文案作成
  • 相続人調査
  • 財産調査
  • 公証役場との打ち合わせ
  • 証人の手配

など、必要なことをすべてお任せいただくプランです。